「夫婦で寝室は一緒にした方がいいの?」
「いびきや生活リズムの違いで別室にしたら、夫婦仲が冷めるのでは?」
――こんな悩みを感じたことはありませんか?
寝室の間取りは、夫婦の関係性や家族の心理に大きな影響を与えます。
今回は「心理学」と「間取り」の視点から、寝室をどう考えると夫婦の心地よい関係が築けるのかを紐解きます。
1. 同室派と別室派 ― 心理的メリットとデメリット
夫婦で同じ寝室を使うと、心理的な安心感や親密性が高まります。
一方で、いびき・寝返り・生活リズムの違いから不満が蓄積し、ストレスになることもあります。
心理学では、親密性と自律性のバランスが人間関係の安定に重要とされています(Murray & Holmes, 1997)。
同室=親密性は高まるが自律性が下がる、別室=自律性は高まるが親密性は下がる、というトレードオフが存在します。
👉 間取りの工夫で「距離を保ちながら安心感を得る」設計が重要になります。
2. 別室が離婚につながる? ― フラストレーション理論から
「別室にしたら夫婦仲が悪化するのでは?」という不安があります。
実際、寝室別室が「気持ちの距離」と直結するケースもありますが、必ずしも離婚リスクを高めるわけではありません。
フラストレーション‐攻撃仮説(Dollard, Miller ら 1939年)によれば、欲求が阻害されると人は強い緊張を感じ、それが攻撃性やイライラにつながる可能性があります。
さらに、Berkowitz(1989年)は「ネガティブ感情や状況の認知」が行動を媒介することを指摘しています。
つまり、同室で眠れない不満(欲求阻害)が溜まれば、それが喧嘩や不和につながりやすいのです。
👉 大切なのは「別室にすること」ではなく、不満をどう解消するか。
間取りと対話で、摩擦を減らす工夫が求められます。
3. パーソナルスペースの確保と心理的安心
心理学者ソマーのパーソナルスペース理論(1969)では、人は自分の心理的領域を尊重されることで安心感を得るとされています。
寝室別室は、この「自分だけの空間」を持つことになり、結果的に夫婦の摩擦を減らす場合もあります。
👉 たとえば「寝室は別でも、起床前後は一緒に過ごせる仕組み」や「書斎・趣味部屋を寝室に隣接させる」など、設計次第で夫婦のつながりを保ちつつプライバシーを確保できます。
4. 会話の接点をどうつくるか
別室で寝る場合でも、夫婦が顔を合わせ、会話を交わせる動線があることが大切です。
心理学の累積的ストレス理論では、小さな摩擦が積み重なると関係悪化に直結するとされています。
逆に言えば、小さな会話の積み重ねが、関係を安定させるクッションになるのです。
👉 具体的には、
- 起床後に自然と顔を合わせられる動線
- 就寝前に一緒に過ごせるリビングの設計
などが、夫婦関係の安心感を支えます。

まとめ
- 同室=親密性は高いが不満も溜まりやすい
- 別室=自律性は高まるが距離ができやすい
- フラストレーション理論の観点では、不満の解消がカギ
- パーソナルスペースを尊重すると安心感が増す
- 間取りの工夫で「距離とつながりの両立」が可能
寝室をどう設計するかは、夫婦関係を守る大事な要素。
心理学と間取りの両面から考えることで、「離婚を遠ざけ、夫婦の絆を深める住まい」が実現できます。
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参考文献
- Dollard, J., Doob, L. W., Miller, N. E., Mowrer, O. H., & Sears, R. R. (1939). Frustration and Aggression. Yale University Press.
- Berkowitz, L. (1989). Frustration-aggression hypothesis: Examination and reformulation. Psychological Bulletin, 106(1), 59–73.
- Sommer, R. (1969). Personal Space: The Behavioral Basis of Design. Prentice-Hall.
Murray, S. L., & Holmes, J. G. (1997). A Leap of Faith? Positive Illusions in Romantic Relationships. Personality and Social Psychology Bulletin, 23(6), 586–604.