片付けてもすぐ散らかる…そのストレス、間取りのせいかも
「収納が足りない」「片付けてもまた元どおり」。
実はこれは不便さだけではなく、心の負担(環境ストレス)にもつながります。視界に雑多なモノが増えるほど注意力は奪われ、家族の小競り合いも起きやすくなる——そんな悪循環を間取りの工夫で断つのがこの記事の目的です。
※私たちは心理学の専門家ではありませんが、研究で言われている知見を住まいに置き換えて解説します。
収納と心に関する心理学のエッセンス
- 環境ストレス:散らかった環境や雑音などの負荷はストレスを増幅し、認知資源を消耗させる(Evans, G. W., 2006)。
- パーソナルスペース:人は適切な「距離」と余白で安心感を得る(Hall, E. T., 1966)。モノが多すぎると心理的圧迫を感じやすい。
- 意志力の消耗(自我資源):判断や我慢が続くと自制力が落ちる(Baumeister et al., 1998)。
- 選択肢過多のパラドックス:選択肢が多いほど決めづらく満足度も下がりやすい(Iyengar & Lepper, 2000)。
- (実務的観察)空きスペースは埋まりやすい:大きすぎる“余白収納”は「何となく入れる」を招きやすい——設計段階で“使い道をラベリングできる単位”に分割するのが有効。
これらをはじめとする心理学的な知見は、家づくりの一つの大切な視点です。
ただし、快適な住まいを実現するためにはこれだけでは不十分で、断熱や耐震といった住宅性能、地域の気候・風土、デザイン性、さらには将来のライフスタイルの変化も総合的に考慮する必要があります。多角的な視点を融合してはじめて、「長く心地よい家」が形になります。
洋服が多いと決められない:毎朝の“決定疲れ”
クローゼットに服が溢れると、「どれを着るか?」だけで意志力を消耗します(Baumeister et al., 1998)。さらに選択肢が過剰だと満足度が下がる現象も確認されています(Iyengar & Lepper, 2000)。
結論: クローゼットは「入る量」ではなく“迷わず戻せる量”を基準に設計するのが合理的。
片付けやすい間取りの設計ポイント例
1) 動線に沿った“自動片付け”設計
- ただいま導線(玄関→コート掛け→手洗い→LDK)上に、鍵・郵便・ランドセルの専用置き場を分散配置。
- 「使う場所の近くに戻す」が最短距離で完了するようにする。
2) 収納は“量”より“単位”
- 大きな一室収納より、使用目的で区切られた中小の収納単位。
- 例:掃除機は充電コンセント付き“小さな納戸”、文具は家族デスク脇の浅引き出し。
3) 見せる/隠すの最適比
- 毎日使う物:見せる(オープン)で取り出し1秒・戻し1秒。
- たまに使う物:半オープン(扉+浅め)で“迷い”を減らす。
- 雑多な物:隠す(クローズ)で視界を休める。
※家族の性格により最適比は変わります。
4) クローゼットは“決める→戻す”が一歩
- 上段:オフシーズン箱。中段:一軍(よく着る)。下段:二軍(季節替え)で動きの少ない配置。
- ミラーは扉裏、照明は演色性の高いものを採用し迷いを減らす。
5) 将来可変の“拡張余白”
- 可動棚、可動間仕切りで子の成長/在宅ワーク/介護に追従。
- 余白は“目的を想定した空白”に。目的のない空白はモノの吸着点になりやすい。
佐久エリアで効く収納計画
- 四季の振れ幅が大きいため、外套・雪用具・季節家電の“出し入れ頻度差”を前提にゾーニング。
- 土間×家族玄関で外物(ベビーカー/アウトドア)を屋内に持ち込まず、LDKの視界を守る。
- 移住者は持ち物が増えがち。入居時点で“手放す・残す”を前提に容量と単位を設計。

事例
リビングに“家族デスク+浅引き出し+投げ込みボックス”を設け、帰宅導線に鍵・郵便の定位置を配置。クローゼットは一軍/二軍ゾーン分け。結果、出しっぱなしが激減、探し物と家族の小競り合いも減少。「片付けが続く」家に。
※必ずしもモノが片付いているから心理的に安心するわけではなく、その人の性格によっても異なります。
まとめ
『心を整える収納は“戻しやすさ”で決まる』
- 環境ストレスを減らすには視界の情報量を調律すること。
- 決定疲れを避けるには選択肢を“迷わない単位”に分解すること。
- 間取り×収納×動線を統合すれば、家族の毎日がラクになる。
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参考文献
- Evans, G. W. (2006). Child development and the physical environment. Annual Review of Psychology, 57, 423–451.
- Hall, E. T. (1966). The Hidden Dimension. Anchor Books.
- Baumeister, R. F., Bratslavsky, E., Muraven, M., & Tice, D. M. (1998). Ego depletion: Is the active self a limited resource? Journal of Personality and Social Psychology, 74(5), 1252–1265.
- Iyengar, S. S., & Lepper, M. R. (2000). When choice is demotivating: Can one desire too much of a good thing? Journal of Personality and Social Psychology, 79(6), 995–1006.
Kahneman, D., Knetsch, J. L., & Thaler, R. H. (1990). Experimental tests of the endowment effect and the Coase theorem. Journal of Political Economy, 98(6), 1325–1348.